forestlimitにおける深夜営業の原則的な取り止めに関してのお知らせです。
序章 – party NEVER end -
DJが針をレコードに落とした瞬間からパーティーは徐々に始まっていく。フロアが熱気を増していくと、パーティーヘッズがぞろぞろと集い始める。頭を撃ち抜くスネアがツイーターから放たれ気分は知らずと高揚していく。体を振動させるサブウーファーに手足はステップを無意識に刻んでいく。真っ暗闇のフロアにミラーボールの閃光が瞬いて、レコードも光もぐるぐる回りながら、誰が誰ともわからない暗がりのなかで、誰かはビートに合わせて体をくねらせ、誰かは音と一体化したように佇んで、誰かはバーのまわりで酒をかっくらってとりとめのない馬鹿騒ぎをしている。換気の悪い地下室で、ケムリと熱気と欲望がぐるぐるまわりながら淀んでは流れていく。トポスの熱源はひんまがってストーンしてパーティーを加速させていく。陽光も月光も一切降り注がない地下の廃墟のようなフロアで時間は失効していく。今何時? 真夜中なのか昼間なのか夕暮れなのか。恐らく真夜中だろう。そんな気がする。しかしそんな自覚もフロアの熱狂に流されて、いつ終わるともわからないパーティーのグルーヴに飲み込まれていく。DJがANTHEMをスピンした。流れも抜群、音量も音質も適切で、誰も彼もが音に向かってチューンインしていった。最高密度のフロア空間で誰かが絶叫した《ドントストップミー!》それをきっかけに飛び交う歓声。DJがアイソレーターを駆使して激情を演出していく。永遠に終わらないと思えた瞬間があった。美しいと思った。それこそがパーティーだ。パーティーネバーエンド! 今日は帰宅して疲れて眠るかもしれないけど明日もフロアがあなたを待っている。音楽があるかぎり、フロアは永遠に存在する。形をかえたとしても。
声明文
forestlimitは深夜営業を原則的、段階的に取り止めていくことに致しました。
2016年6月に施行された“新風営法”においてダンスを含む遊興をさせる深夜営業が法的に認められ警察の認可を受ければその営業が可能となりました。しかし、forestlimitはその要件を満たしておらず、深夜帯のパーティーは行えません。警察からの指導もあり、法令遵守の精神も尊いと考えており、スタッフ一同及び懇意にさせて頂いているイベンターの一部の方と相談し、苦渋の決断ではあったのですが、上記の通り深夜帯の営業を段階的に取り止める方針を立てました。一方で、今もなお、限定的で自律したフロア空間で発生する事象に対し、いかなる勢力からも侵害されない権利があると考えております。forestlimitは今後もパーティを続け、またその新しいリアリティーを探します。先人の知見を吸収しつつ“アンダーグラウンド”を再定義する必要があるのかもしれません。
七年間の間、沢山のパーティーを深夜に開催し、多くの思い出と思い入れを持っています。店主個人の感覚は非常に難しいものでした。この舵取りが経営的にも成立するのか未知数な状態であり不安はあります。
しかし、現在は感情と思考の整理がつき、深夜帯以外での営業に前向きに取り組んでいこうと考えています。むしろ忘れていた野心を取り戻したような晴れやかで挑戦的な気分の高揚さえ感じます。
現在、音楽を取り巻くインフラとそれを支える生活は激変しております。たくさんのパーティーが開催され、選択肢も多様ですし、パーティーのみならず消費の方法も多様化しており、生活の方法も質も変節しております。この激動の時代に、選択肢の1つとしてのforestlimitはオルタナティブスペースとしての初心に立ち返り芸術表現の広野に向かって新たな一歩を踏み出そうと思います。
素晴らしいパーティーにとって深夜開催が必要条件ではないと思います。今まで深夜に開催していたパーティーも可能な範囲でデイ枠に移植したいと思いますし、より具体的には、平日においてレギュラーパーティーとスポットの企画を織り混ぜ実験を繰り広げたいと考えております。平日の実験を踏まえ週末には考えを巡らせてクオリティーを保証した企画を打ちたいです。アフター箱として朝六時からの企画にもチャレンジしたいですし、深夜は[スタジオ]としての機能を強化します。バンドを中心としたライブ活動にも今まで以上に力を入れますし、また、オルタナティブスペースとしての矜持を再び自覚し音楽/音響表現以外の芸術表現をより強力にサポートしていきたいと思っています。展示、舞踏、演劇、映画…芸術のフォームは多種多様ですし、多種多様な表現者がいます。多用な表現に対しスタッフ一人一人がその役割のなかで真剣に立ち向かい、一つ一つを成功させる事の帰結としてforestlimitという場所そのものが“アートである”状態を目指します。
ここでforestlimitが提供する環境と制約にこそ今一度目を向けて頂きたいです。私たちに関して言わせて頂きますと経験値を得ましたが経験の再現をいたずらにしたいわけではありません。身に付いた知見を、異質で今だ未明な“なにか”を獲得するために総力をあげて活用したいです。そんな私たちとforestlimitで企画を立ち上げる場合、関わるすべての人(もちろんお客様もです)と場所が最高のシナジーを発生させるにはどのようなことをしたらいいのか? そこにおいてどのような制約が生じ、またどのような利点を導き出せるのか? 話し合いと現場を行き来しながら企画を成熟させていきたいです。
少しでもアイディアやビジョンが浮かんだら是非身近にいるスタッフにご相談下さい。forestlimitに立ち入った時に得られたビジョンの芽は可能性の宝庫です。それを一緒に育んでいきたいです。
今後とも幡ヶ谷forestlimitを宜しくお願い致します。素晴らしいと思えることを成し遂げられる日々を強い意思の力で共に続けられますように。
幡ヶ谷フォレストリミット 一同
文責/幡ヶ谷フォレストリミット代表 ナパーム片岡
問い合わせ
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080-7011-1837